Alfa Romeo Zagato Junior

朝から無性に天丼が食べたかった。
 
最初はなんだか、その額が小さいようなその顔がどうもすてきだとは思えなかったのだが、一回り試乗をしてみると、そのすべてが手中の中に納まっているようなこきみよさ は、何物にも代えがたい。そういっても過言ではないほど心地よい乗り物だった。アルファロメオのとりこになるのに、長い時間はかからなかった。
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このクルマと暮らすようになって、僕の脳みそは冴えわたっていた。寸暇を見つけると僕の脳細胞、に限らず体内のあらゆる細胞は総動員で「どこまでドライブしようか」というプランを組み立て始める。このクルマに乗るための口実を見つけるのに、一つや二つのプランではなく、ざっと両手にいっぱいなくらいのドライブプランは瞬く間に「降りてくる」のだった。
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しかし。が、しかしである。
今日に限って、たちまち降りてくるドライブプランのいずれも、私に天丼を食べに行くことを薦めた。折角からりとあげた香ばしい天ぷらを濃厚なたれにくぐらせて白い飯の上に躊躇なく、そして存分に載せる。人によっては「実に残念だ」と言わしめる天丼。
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しかし、その香ばしい香りから、たれにくぐるときの湯気を上げながら泡を立て、体制が整ってからなお、飯にたれが染み入るという一連の行程は、わが食欲の3段活用と言ってよいだろう。すべては、あらゆる理性をはぎ取るかのように悩ませてやまないあのたれがいけないのだ。その華麗なる残念なご馳走、今日の目的地に設定しないわけには、もう行かないところまで来ていた。
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そんな今日とは、いつもソロで「峠にお詣り」していた僕が、初めて「お迎え」に行かねばならないという日なのである。なんでそんなことをしなければいけないのだ!!こういうのは不慣れだからに違いないが、いうなればどこか不機嫌な朝である。普段はそんなもの呑まないのにコーヒーを入れてみたり、たばこなんぞ吸わない自分が、美味しいからともらったシガーのしけもくを口に運んだり、普段しないようなことを次から次へしてしまうから、よけい所在無かった。
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思えばこのアルファロメオは天丼のたれのようなものだ。すべてを支配している。こんなクルマで誰かとドライブに出かけるなんぞ、そもそも人として・・・だから今朝のような朝は、アルファロメオさえ残念なクルマだ。そう思えてならなかった。
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「今日は天丼を食べに行きます!!」
そう言うと、一瞬びっくりしたような顔をしたものの、すぐに、意を得たり、というような表情で笑顔が戻った。そしてするっとナビシートに自分でもぐりこんだ。
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僕も食うが彼女もよく食う。
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「美味しいね。ここ来てみたかったんだ」と言われたので、それは何よりだと思った。
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そして続けた。「ドライブするとおなか減るね。私は運転してないけど(笑)」実にその通りである。
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その横顔を見ていたら、こちらまで幸せになってくるようだ。
そしてやがて「この人ともう少し向き合おう」と思った。いや、この思いはテンプラなんかではないのだ。真面目にそう思ったのである。
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photogrpher:Masaru Mochida
model:Risa Shimada
writter:Kentaro Nakagomi
 
 

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