Good Luck!!
「ねえ、まだ行かないの?」
このクルマで学んだことがある。
それは「あくる日も昨日と同じとは限らない」ということ。
だからこそ当たり前のようなことに感謝しなければならないし、
真新しい気持ちで過ごさなくてはならないのだ。
きっとイタリア人はそうやって生きてきたのだ。
だから、もし動かなくても
「こういうこともあるさ」そういって流せるんじゃないかな。
綿密に組まれた予定が、もし少しでも壊れたら
とても大きな問題にする国に生きてきたが、
今となっては問題にすることじたい、「器が小さいな」
と思うようになったのだから、われながら感心する。
でも今日は参った。。。
何も今日止まらなくてもいいのに。。。
昨日はあんなに元気に走ったのだ。
箱根のいつもの、特に最後から3っつめのカーブでは
テノールもリリックだった。
運転していて心を打つのだからたいしたものだ。
Bravo!!Bravo!!
しかし今朝の君と来たら・・・
この重要性が、、わかるわけないよな。
初めて彼女を誘ったということ。
今出ると、ついたときに港の汽笛が鳴るということ。
そして、「友達」は今日で終わりにしたかったのに。
こんな日に動かないなんて・・・
やっぱり彼女とはうまくいかないのかなあ。
「やっぱり動かないんだ」
彼女は寂しそうな顔で覗き込む。
「今日のドライブはムリかな。楽しみにしてたんだよ、、でも仕方ないよね。
『ちゃんとしなさい』って言ったって、クルマだしさ・・・」
その言葉に少し安堵する。
まだ寒いが、冬の細い日差しはやわらかい。
ただ時だけが過ぎていく。
ごめんな、本当は是非これで連れてってあげたいところがあったんだ。
そんなつもりもないけれど、まるで取り繕っているようだ。
「ううん、いいの。だってかわいいじゃん、このクルマ。なんかまん丸のライト見てたら私も気に入っちゃったよ♪こんど調子がよくなったらまた一緒にそこまで行こう、ね。」
「だから、今日はずっとアルファの日。このクルマ見てるの。お天気いいし、いいでしょ?」
なんだか彼女のその言葉に救われたような気がした。
朝から「困ったさん」の愛車。邪魔をしたのではなく、
彼女がいいやつだと教えてくれたんだな。
ありがとう・・・・・
(Good Luck!)
クルマはそう僕に言ったような気がした。
え?
つい口をついて聞き返すように僕
「どうしたの?」と彼女。
昨日と同じように今日もことが進むとは限らない。
宝くじのようなものだな、と僕は思った。
それほど確率は低くないけど、
宝くじはあんまり当たらないのではなく
「あたり」と「はずれ」しか答えはない。
でももし「あたり」が出たらうれしい、Happyだ。
実はそのHappyを感じられるか、残念か。
ただそれだけのことさ。
次はちゃんと出かけられるといいね。
そういうと彼女はただ
「うん」とだけ答えた。
僕は心の中で叫んだ
君と彼女とのこれからに『Good Luck!』
photographer:Masaru Mochida
model:Maiko Kikuta
writter:Kentaro Nakagomi