あんなに楽しそうな笑顔。見ているこっちまで楽しくなるようだった。
時が経つのも忘れて。
そしてむしのいいことに、いつまでもそんな時間が続くんじゃない かなんて、思ったりして。
むしがいいよね、良すぎるんだよね。
そうはいかないだろうね、ってどこかで思っていたんだ。
わかっていたんだよね。
きっとこうなるって。
いつだってそうだった。サヨナラの直前に、ずっとこんな風に過ごせたらいいのにな、って思うような、のどかで、きらきらとして、静かですがすがしい時間が来るんだ。
いつだってそう。だからどこかで、そんな予感もしていたのさ。
分かってたんだ、こうなるって。
それは「夢のような時間」。でも、夢じゃなかったんだ。
確かにこの手で、すくいあげたのを覚えてる
あれは決して夢なんかじゃなかったんだ。すくいあげたあの感触、やさしくて、
サラサラしていて。
温かかったなあ。僕は幸福感を感じたね。
でも、砂って、みんな下に落ちてしまう。指と指の間をすり抜けて。
両手でお椀のようにして。
べつにそんなに一杯じゃなくたっていいんだよ。
少しだって手の上に残ればいいって、そのくらいにしか思ってないのに。
全然残らないんだから。
「幸せな時間」ってそんなもんだね。
夢じゃないんだ。
夢じゃないんだけど、全然残らない。
陽だまりで暖かくなった砂のぬくもり、そんな微かな感触くらい、しかね。
model:Kanade HOSHINO
photo:masaru mochida
writter:kentaro nakagomi