束の間、私の傍らにいて。
覚めるように視線を奪うもの。
無邪気に、夢中になっていた私を止める甘美な歌。
忘れられない、あの人に抱かれるかのように、すべてを忘却の彼方へと追いやるかぐわしい香り。
それらすべてを征服した。
そう思ったのは、私の浅はかさによるものだったと気づいたのは、
相当時間がたってからのことだった。
何の変化のないのどかな風景。一見そう思ったものの実はとても躍動的なこと。
退屈としか思わないことを続けた者だけが、目を閉じていても進むことのできる暗闇。
どんなに心を惑わす刺激のあとで、すべてをリセットさせる懐かしいにおい。
そういう中で、実は私たちは生かされている。
そういうことの尊さ、美しさに目を向けねば、と思ったのも
やはりかなり時間がたってからのことだった。
この瞬間は夢の中。この瞬間は長い時間のほんの一部。
征服なんてとんでもないことなのだ。
束の間の夢、一緒に見よう。
いや、私が束の間の夢を見ているだけなのかもしれないな。
photogrpher:Masaru Mochida
model:YUKI
writter:Kentaro Nakagomi
special thanks:Tomitaku様
http://www.tomitaku.com/