MASERATI SPYDER ZAGATO

ごく稀に、これは夢なのではないか、と思うことがある。
夢心地なのではなく、現実だと思って向き合ったことが、実は現実ではない、という。
なんとも虚しい。非常に虚しいものだ。
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でも夢とは虚しいものさ。夢だから虚しくたっていいんだ。何かこう自分を言い聞かせるようにそう言ってみたりして。
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何の意味があるのか?とよく聞かれることがある。しかしそういう問いかけに対して私は逆に聞きたい。「何か意味がなければいけないのか?」あるいはそう何から何まで「仕組まれたように意味はあるのか」と。
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雨が降ってくれば傘をさすだろう。しかしささないこともある。
どうしてささないのか?いや、何となく。
濡れるじゃないか、と言われれば確かに。
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しかし、春の暖かくなってきた頃に降る細い雨など、濡れていたいなんていうこともないだろうか。私はある、少なくとも。
じゃあ、なぜ傘を持ってきた、というかもしれない。
でもそれは、濡れていてもいいと思う雨かどうかまではわからなかったから、なんとなく持って出ただけのことだ。
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そこへきてスパイダー、開けて乗るのもいいけれど、開けなくたっていい、と思う。
そもそも、一度踏み込めば、ちょっと負けない、そんなエンジンを載せているけれど、
別にレーシングカーでもないのだ。レーシングカーでもないけれど、高級ロードスターとしても
いまひとつ説得力は弱い。そんな本気のエンジンを載せておくことなど、それにしたって必要ないのだから。
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というより、何から何まで「なぜ何のために」というの鬱陶しいんだ。そんなに理詰めで進めるそのやり方で、さして理由のないことばかりで適当に進めている私よりどれほど成功しているというのか。どれほど効率的だというのか。
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それよりも何となく、で進めて、ゆるい隙間から漏れてくる、明け方のような色。はっきりしないけど。圧倒的に力強く、朗らかで、色気のある鋭い光。あの色に染まりながら生きていた方が、取りこぼしも多いけど、きっと幸せなんじゃないかな。僕は正直そう思うんだ。
そして一方君のことさ。
柔らかい微笑み、すらっと伸びた脚。
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なくてもいいかもしれないけれど、あった方がいいんだ。そういうのは。そうでなくてもいいけれど、他では味わえない喜びをもたらしてくれることの尊さ。
スパイダーザガートは常日頃僕にこう語りかけていることとはこんなことなことだろうか。
photogrpher:Masaru Mochida
model:MAYUKA SAKAMOTO
writter:Kentarou Nakagomi