黒い杜
ものすごい熱気の後に
全てを打ち消そうとするかのように
一気に降った雨のせいで涼やかな風が抜ける。
黒の似合う君の微笑みに
まるで合わせるように清々しい。
そろそろはっきりと背を向け始めた、つかの間の夏。
騒がしいのも、過ぎ去るとなればどこか物憂い。
黒の似合う君の真紅なルージュは明瞭だが、
それがかえってアンニュイに魅せるよう。
風はどこから吹いてくるのか?
どこまでも黒い杜を抜ける頃にはあの
一瞬にして燃え上がらせるような熱気はないのだろうな。
黒の似合う君のささやき、
眠れない夜も、涼しくなって深く寝入った夜でさえ、
耳を離れることはないだろう。
夏の灼熱も、
夏の背中、秋の手先の涼風も
その風が消えるまでどこまでも
夏は果てしない黒い杜。
黒の似合う君はきっと常夏の使者。
今までも毎年そうだったように
来年も、再来年も、
バッチリとキメた黒い夏は来る。
黒の似合う君は、
その僅かな時だけ現れるような黒い杜の中から、
おいでおいでと、妖しく呼ぶ「黒い杜の精」のようだね。
ふうっとこちらへ来るようで怖いから、
「また来年」そう言うと僕は扉を締めた。
目が覚めると虫の声。
秋がさみしげなのではなく
夏が去りゆくからさみしいのではないか。
ぼんやりと過ぎる晩夏の午後。
磨き過ぎた黒いボディには、もう秋だよ、と
言うように、抜けるような青空が映っていた。
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photogrpher:Masaru Mochida
model:Yuki Sano
writter:Kentaro Nakagomi