Ford Mustang GT 390

お帰り、おねえちゃん!!
Ford Mustang GT 390,Ford
「おねえちゃん」は姉貴のような、母親のような。
しかしときどきおどけて見せたりした。
近所の面倒見のいいお姉さんだった。
Ford Mustang GT 390,Ford
時に「お節介だなあ」なんて思ったけど、
そんなのがかえって嬉しかったりもしたものだ。
Ford Mustang GT 390,Ford
寂しかった、正直。
「おねえちゃん」がお嫁に行ったときには。
とても晴天澄み渡る初夏のことだった。
Ford Mustang GT 390,Ford
なんだかとられたような気もしたし、
永遠にお別れのような気もした。
そしてそれは今まで感じたことのない気持ちだった。
Ford Mustang GT 390,Ford
そんなだから当然、その時の僕は
「おねえちゃん」がお嫁に行ったのはずいぶん遠い街のような気がしていた。
でも、隣町の古い和菓子のお店のおかみさんになったのだ、
そのことを改めて知ったのは、もうだいぶ経ってからふと買い物のついでに
涼もうと入った甘味処のある和菓子屋さんで偶然久しぶりにおねえちゃんを
見かけたときのことだった。
Ford Mustang GT 390,Ford
こっちはだいぶ背も伸びたから
はじめわからない様子だったけど、
「あら、元気してた?」
「板についた和服姿の女将さん」な
「おねちゃん」は、昔のように、昨日も会ったかのように
自然に迎えてくれた。
その板についた和服のさまにちょっとはっとした。
自然な出迎えがなぜかとても嬉しかった。
Ford Mustang GT 390,Ford
それから時々その甘味処に行くようになった。
違うんだって、そこのあんみつが好きだったんだってば。
しばらくして免許を取ると、
親父のクルマを借り出しては近所をぐるぐるするようになった。
用事がなくても出かけた。
出かけるために用事を作った。
用事がないときは、数キロ離れた海浜公園まで行き、
エンジンを開けてみたり、窓を開けて昼寝をしたり。
Ford Mustang GT 390,Ford
なんだか気が付くと「おれの居場所」
海浜公園の駐車場は僕にとってはそんな場所だった。
Ford Mustang GT 390,Ford
ある日のこと、いつものように駐車場に行くと
見たこともない、クルマがいる。
なんとなくじっとそのクルマを見つめている。
・・・かっこいいなあ・・・
そのクルマを運転しているのは女性だった。
・・・かっこいいなあ・・・
あれ?
Ford Mustang GT 390,Ford
「おねえちゃん」だ!
Ford Mustang GT 390,Ford
「和服姿の女将さんになった」というのがぼくの「おねちゃん」に関して最も新しい
上書かれた情報だ。
Ford Mustang GT 390,Ford
それからすると、カジュアルな格好で今度は僕がわからなかった。
Ford Mustang GT 390,Ford
「ご無沙汰♪免許取ったの?運転気をつけなよ。」
「おねえちゃん」はいつも変わらない。
Ford Mustang GT 390,Ford
さらに続けて、
「今日お休みだったから、久々に気分転換にここまで走らせたのに、あんたに会うなんて。こんな恰好で来るんじゃなかった。内緒だかんねww」
元気そうでなによりだ。
Ford Mustang GT 390,Ford
「ん?このクルマ?うちの人のだけど、たまに乗せてもらうの。普段は少し離れた、借りてる車庫に入れてるの。内の商売柄あんまりこれ乗り回すわけには。あんたもこういうの好き?」
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アメリカの荒野を駆け抜けるような、とか
アメリカンファッションとしてよくこのクルマ注目されるけど、
僕にとっては「和菓子屋の女将さんになったおねえちゃんの休日」
それがこのクルマのイメージだ。
Ford Mustang GT 390,Ford
マスタングだろうがムスタングだろうが、
そんなことは、僕にとってはどうでもいいのだ。
Ford Mustang GT 390,Ford
photogrpher:Masaru Mochida
model:Asami Oonuma
writter:Kentaro Nakagomi